『エスペラントの基礎』はエスペラントを改造することを認めていない。しかしながら、年月がたつに従って、たくさんの団体・個人がエスペラントの「改善」を旗印に、エスペラントの改造案を提示した。改造案のほとんどは失敗か計画段階にとどまったが、唯一1907年にパリで行われた国際語選定代表者会で発表されたルイ・ド・ボーフロンによるイド改造案(イド語)はある程度の支持者を得た。イドの主な改造はアルファベット(特に,字上符付き文字の撲滅)と幾つかの文法事項の変更であった。初期には比較的多くの人がイド改造案に賛同したが、この運動は改造に次ぐ改造を呼び次第に分裂していった。今なお、250 から 5,000 人がイド語を使用しているとされるが、使用人口・影響力ともエスペラントとは比較にならず、これもまた「成功した」とは言い難い。
Fasileなどの新しい国際言語案もエスペラントを意識したものと言えるが、これもエスペラントを脅かすレベルまでには全く到達していない。
テリーヌ レーション パドック コラール ランド ブリス しし唐 レッド ダラス バスタ クロノグ ティング ドライ フルカップ ゴッド ハイド カナン シダレ りつりん ひぼう チカフ ナーバス なかふら ヨゴリーノ 高菜 ドアボーイ フレナ ユズリハ 潮の香り ブラック やしゃ オリンピピ ヤラピン イスア スラム ミラージュ ビート ワイポ クローニ オゾンホ プラン シトラス やなだに テラピア セレクト バック カイドウ バルブトゥ シティ あきう
アルファベット
エスペラントのアルファベットはalfabeto(アルファベート)と呼ばれ、ラテン文字アルファベットにサーカムフレックス付きアルファベット ĉ, ĝ, ĥ, ĵ, ŝ とブレーヴェ付きアルファベット ŭ を加えた28文字を使用する(ただし、ĥ は k に置き換えられる傾向にあり、今日ではあまり見られない)。q、w、x 及び y は人名や科学記号など特殊な場合を除いて使用しない。各字母の名称は、母音字はその発音、子音字はその子音に母音 -o を付けたものである(a アー、b ボー、c ツォー、ĉ チョーなど)。 ちなみに q、w、x 及び y の名称は、それぞれ q クーオ、w ドゥオブラ・ヴォー(又はヂェルマーナ・ヴォー若しくはヴァーヴォ)、x イクソ、及び y イプスィローノ(又はイ・グレーカ)である。
[隠す]表・話・編・歴エスペラントアルファベット
A B C Ĉ D E F G Ĝ H Ĥ I J Ĵ K L M N O P R S Ŝ T U Ŭ V Z
a b c ĉ d e f g ĝ h ĥ i j ĵ k l m n o p r s ŝ t u ŭ v z
代用表記
英文タイプライターなどでダイアクリティカルマークが付いた文字が表示できないとき、別の文字に置き換えてダイアクリティカルマーク付き文字を表現することを代用表記(Surogata skribosistemo)と呼ぶ。h, x あるいは ^ などを文字の後ろ(又は前)に加え、ダイアクリティカルマーク付き文字であることを示す方式が主流だが、ŭを w に置き換えるなど、エスペラントで使用しない文字に置き換える方法もある。何を後置するかによって、H-方式、X-方式のように呼ぶ。現在はUnicodeが普及したことにより、コンピュータの上では代用表記の使用は少なくなってきている。
H-方式
H-方式(H-sistemo)またはザメンホフ方式(Zamenhofa sistemo)は h を後置する方法で、唯一『エスペラントの基礎』で定義されている方法である。そのため「第2の正書法」とも呼ばれる。ただし u にだけは後置しない。flughaveno(空港)のように代用表記に見える綴りがあると紛らわしいという欠点がある。エスペラントで使用する文字を使用するこの方式が採用されたのは、活字の数を増やしたくなかったためと言われている。
X-方式
X-方式(X-sistemo)は x を後置する方法である。x はエスペラントでは使用しないため(エスペラント文に限れば)置き換えるのが簡単であるという利点から、インターネットなどで広く使われている。ただし、フランス語の人名や名詞・形容詞(特に複数形)には -(e)aux, -eux または -oux で終わるものがあるため、このような置き換えたくない文字の処理をどうするかが問題になる。この問題を避けるため、ŭを ux と書かずに vx と書く方法があるが、あまり広まっていない。
エスペラント版ウィキペディア・ウィクショナリーの代用表記
エスペラント版のウィキペディア、ウィクショナリーには、X-方式が使われていて、cx を ĉ、gx をĝ と、x が付いた文字を自動的に字上符付きのものに置きかえる機能がついている。置き換えたくないとき、編集ページで uxx と入力すれば本文中で ux と表示される。置き換え処理は何度か改良されている。以前のバージョンでは[[eauxx]](フランス語で「水」の複数形)と入力すると eaux のように表示はされるがリンク先は "eaŭ" となり、"eaux"という記事名で新しい記事を作ることができない不具合があったが、現在は解消されている。
キャレット方式
^-方式(^-sistemo)は、c^, g^ のように ^(キャレット)を後置する方法である。ŭ については u^, u~ の双方が見られる。H-方式などに比べて見栄えが良くないという欠点はあるが、キャレットがサーカムフレックスと同じ形であることから、初心者やエスペラントを知らない人でも容易に理解できる利点があり、こうした人々を読者に想定した文書などでよく使われる。
TeXでの代用表記
TeXでエスペラントを記述する場合にはH-方式もX-方式も使いにくいと言うことで、babelパッケージでは独自の方式を使うことになっている。この方式では字上符が付くべき文字の直前に ^(サーカムフレックス)を置いて表す。この方式とX-方式はsedやawkなどの簡単なスクリプトで相互に変換することができる。
Unicode
かつてコンピュータがダイアクリティカルマーク付き文字を扱えなかったころは、エスペラントを何らかの代用表記で表すしかなかったが、現在はISO 8859-3(いわゆるLatin-3)やUnicodeの普及により、コンピュータ上でもエスペラントのダイアクリティカルマーク付き文字を表示できるようになった。以下はHTMLなどで表示する場合の実体参照である。
Ĉ: Ĉ
ĉ: ĉ
Ĝ: Ĝ
ĝ: ĝ
Ĥ: Ĥ
ĥ: ĥ
Ĵ: Ĵ
ĵ: ĵ
Ŝ: Ŝ
ŝ: ŝ
Ŭ: Ŭ
ŭ: ŭ
アクセント
「アクセントは常に最後から2番目の音節にある。」(エスペラントの基礎、文法第10条)
エスペラントのアクセント(強勢)はakcento(アクツェント)と呼ばれ、日本語のような高低アクセントではなく、英語などと同じ強弱アクセントである。英語では同音でアクセント位置によって意味が異なってしまうdesert(砂漠)とdessert(デザート)を、エスペラントではdezertoとdesertoのように音を変えて取り入れている。この例は、フランス語の音(それぞれ /dezEr/, /desEr/)から、またはその中間形を、取り入れたとも考えられる。アクセントの位置によって単語を区別する必要がないため、人によって高低アクセントになってしまったり、あまり注意が払われない場合もある。
綺麗に発音するためイタリア語などと同じように、アクセントのある母音を心持ち長めに発音するのが推奨されている(母音の長短そのものは意味の違いをもたらさない)。ただし、最後と最後から2番目の母音の間に子音が2個以上あるときはアクセントのある母音を短く発音し、子音が無いか1個だけのときに長く発音する。これに加えて、最後と最後から2番目の母音の間の複子音の第二要素が l, r のものと kv , dz である場合はアクセントを長く発音するというものもある。
また、特に詩などで、語末の母音を省略することがある(母音が省略されていることを ' アポストローフォで示す。)が、その場合でもアクセント位置は変わらない。
単語
最初のエスペラントの語彙は、1887年にザメンホフが出版したLingvo internaciaの中で定義されている。初期には900語定義された。しかしながら、言語の使用者は必要に応じて多くの言語で国際的に最も使われている単語を取り入れて使うことが、文法規則(エスペラントの基礎、文法第15条)によって許されている。1894年、ザメンホフは最初の5カ国語(仏・英・独・露・ポーランド)のエスペラント辞書Universala Vortaroを発表した。そのときから特に西ヨーロッパの言語から多くの外来語がエスペラントに取り入れられた。より多数の使用者が取り入れた単語が人気を得て広まっていった。近年では、新しい外来語や造語のほとんどは技術用語または科学的な用語である。日常的な用語は既にある単語から合成して造られるか(例: komputilo)、あるいは既存の単語に新しい意味を追加して使う傾向にある(例:muso: 鼠、はコンピュータの入力装置の意味も持つようになった)。
新しい外来語を取り入れるか、それとも既存の単語から新しい単語を合成したり、既存の単語に新しい意味を加えたりして対応する方が良いのか、この種の議論には限りが無い。エスペラントを学ぶ人は基本単語に加えて、単語が結合する規則なども覚えなければならない(例:eldonejoはそのまま訳すと"出す所"で、それは「出版社」や「発行所」を意味する)。
すべてのエスペランティストが新しい単語を創り出す権利を持っているので、造語法を学ぶことは非常に重要である。新しい単語はエスペラントのコミュニティで使われていく中で次第に淘汰され、ほとんどの場合、最終的に一つの形に落ち着くことになる。例えば「コンピュータ」に相当する語は最初、komputmaŝino、komputilo、komputatoroなどいろいろな形が使われたが、最終的にkomputiloに落ち着いた。しかし「データ」を表すdatenoとdatumoなど、複数の形が併存している例も見られる。
幾つかの単語はそのままの意味の他に慣習的な意味を持つものがある。例えば、ワニを意味する"krokodilo"から派生した"krokodili"と言う動詞は、「エスペラントを話さなければならないところで自国語を話す」という意味がある。
最大のエスペラント辞典はLa Nova Plena Ilustrita Vortaro de Esperanto(SAT, 2002, ISBN 2-9502432-5-8)であり、16,780個の語根と46,890個の複合語句が記載されている。2005年、最新の改訂版が出版された(ISBN 2-9502432-8-2)。これは英語などの辞書と比べると非常に少ないように思えるが、実際にはエスペラントの造語法に従って自由に複合語をつくることができるので、実際に世界で使われている語彙は数十倍にのぼると考えられる。